自然豊かな静岡県駿東郡清水町出身。生き物が好きな少年時代を過ごし、特に好きな魚に関わる仕事に就きたいと幼い頃から思う。
大学進学で北海道大学水産学部へ進学。大学卒業後、一般企業へ就職。エンジニアとして働いた後、転職活動を行い25歳で現職である、「千歳サケのふるさと館」学芸員として就職。2011年4月に副館長に就任。サケのスペシャリストとして、地元の子どもたちから、観光客まで多くの方に、サケの魅力を伝えている。

自分の好きなことを諦めずにチャレンジする

ー 水族館でのお仕事はどういったことをされているのですか?

教育普及と生物の飼育・展示、企画立案がこの館での主な仕事になります。僕たちは学芸員という名のもと、教育・調査・研究をしています。海外ではキュレーターなんていう格好いい名前がついていますが、日本では雑芸員と言われる様に、なんでも屋さんです。
千歳という土地柄、鮭と縁があるまちなので、小学校の総合学習の時間に出張講師で学校に伺ったり、館に来ていただく時はレクチャーをしています。鮭は人間社会と密接に繋がっている生物なので、文化的、生物学的、歴史的側面など多面的に学習プログラムを組んで伝えています。

ー サケのふるさと館の学芸員になるきっかけは何ですか?

水族館での仕事は、館の退職者がいたり、新規の水族館をつくる時にしか募集がなく、タイミングが合わないと就職できないとても狭い道なのです。僕も就職時には全国の水族館に問い合わせたのですが、なかなかタイミングが合わず、本社が東京にある、北海道で鮭の養殖を行う会社に入社しました。そして、入社した時には既にそのプロジェクトが終わってしまったという、、。びっくりしました。その当時はバブルで各企業が多角経営をしていて、その会社も元々は鉄鋼を扱っていて、工場の建設などに携わっていました。養殖プロジェクトが無くなったので、僕もいきなり工場をつくるエンジニアとして働くことになりました。ただ、魚介類を扱う工場をつくることが多かったので、まだ興味を持ちながら仕事ができたのが幸いでした。ですが、その部署も2年後には無くなってしまい、その次は薬品関係の部署の担当になりました。薬品工場を設計する部署なのですが、さすがに魚とは縁が遠くなってしまったので、転職活動を始めました。お世話になっていた大学の教授から、千歳に新しい水族館ができるらしいという連絡をもらい、このまま前の会社にいるとアメリカに研修に行かねばならなかったので、タイミングだと思い辞めました。鮭を扱うという特殊な水族館な為、開館は秋、採用は開館1年前の8月、空白の約半年はアルバイトをしながらの生活です。 中途半端な時期が採用だったためか、2人採用のところ3人しか受けておらず、競争率が低く晴れて水族館の職員として採用されました。

ー もともと鮭が好きだったのですか?

正直、鮭に興味はありませんでした。子どもの時から野山を歩いて魚を穫ったり釣ったりしていたので、野生の魚に興味があったのです。自宅でも自分で釣ってきた魚を育てていました。なので、金魚の様な人の手によってつくられた魚には興味がなかったのです。
鮭は放流事業がピックアップされますが、僕には家畜の様に見えていたんですね。外洋を回って戻ってくることで人の手から離れることはありますが、漁業のためでしょ?なんて思っていたのです。この仕事に就くことになって、鮭のことを勉強しなきゃと思って調べはじめた20年前くらいから、放流することでの弊害として地球温暖化などの環境が変化する問題が出てきていました。生物多様性が話題になるなかで、野生の鮭をつくっていかなければならないという話が出始めていて、そのプロセスに関わっていきたいと想い、ぐっと興味が湧いてきました。

体感した体験を自分のものにしてもらう

ー水族館の仕事で達成感を感じるときはどのようなときですか?

当初は、魚が好きで育てること、魚とコミュニケーションをとることに面白みを感じていました。今は人に伝えることで、日常で鮭や自然保護について興味を持ってもらえることが嬉しいです。小学生の授業では、魚は水生昆虫を食べているんだよということを伝えるのですが、毛針で千歳川で魚を釣ったりするんです。毛針を水生昆虫と間違えて魚は食べようとするんだということを、実際の水生昆虫を見せながら伝えるんです。魚を釣ると小学生のヒーローになるんですが、子ども達が親へ、千歳川で魚を釣ったことを伝えるんですね。そうすると、次は家族で川に行って魚を釣ったことを報告しに来てくれるんです。自分の伝えたことが相手を通して消化され、また次の人へ伝わっていく。自分の研究の成果よりも、自分の言葉が伝わることが今は達成感です。

ー ご自分の仕事でのこだわりはどういったことですか?

水族館は魚を飼っていますが、なんのために飼っているのか常に考えていなければなりません。水族館は外へ飛び出すファーストステップだと思っています。水族館で見たこと、知ったことが実際に身近な川の中にあるということ、海にあるということ、ちょっと外に出かけることで自分の身近にあることを知って欲しいのです。当館には千歳川の護岸の一部となり川の中を覗けるエリアがあります。実際の川の中にいる魚の姿をみることで、地元の川の豊かさ、綺麗さを知って欲しい。自然環境は人が気にすることで守られていくと思います。人が関心を失うと守れなくなる。なので、展示も見ている人のアクションに繋がる様な展示、伝え方の方法にこだわっています。

はたらきっぷ=本

ー 今の仕事に興味を持ったきっかけ、仕事に対する価値観が変わったきっかけなどを駅に例えて、きっぷに書き込んでみてください。

小学校1年生の夏に読書感想文の宿題があり、指定図書で「イシダイしまごろう」という本に出会いました。神奈川県にある京急油壺マリンパークが題材となっており、イシダイに“しまごろう”と名前をつけ飼育員が芸を教えるのですが、体には傷があり、しまごろうが海でどんな生活してきたのか、飼育員が想像をするというストーリーに夢中になりました。その時から京急油壺マリンパークの館長であった末広さんのファンになり、 末広さんが書いた本がでればすぐに購入し、中学生くらいになると何冊も本を読んでいました。

ー 今から5年後の将来像として、目指す姿はどのようなものですか?

2年後には開館20周年もあるので少しづつリニューアルしていきたいです。なるべく水槽自体も自然に近づけていきたいです。展示スペースの坂道を利用して千歳川が支笏湖から始まって、上流、中流、石狩川に繋がって日本海に出ている様子の展示をしているのですが、まだまだ環境の変化までを伝えきれていません。目標は本来の魚の姿を環境と共にリアルに伝えられたと思っています。
千歳 サケのふるさと館
副館長   菊池 基弘
住所   千歳市花園2丁目312番地
TEL   0123-42-3001
FAX   0123-42-2310
営業時間   9時~17時(入館は16時40分まで)
URL   http://www.city.chitose.hokkaido.jp/ tourist/salmon/index.html