石狩市 坂口智則さん
札幌で生まれ育ち高校生までバスケット少年として過ごす。18歳からサーフィンを初め、海の魅力にとりつかれる。その後小樽の海水浴場でライフセーバー団体と出会い、海での人命救助・事故防止の必要性を感じセーバーの道に進むことを決める。一時サラリーマンとして仕事をし、27歳の時に石狩専門のライフセービングの団体を立ち上げる。現在32歳。石狩ウォーターパトロールの代表、RED&BLUE アウトドアクラブの代表として、海の安全を守り、海を楽しむ場づくりを行っている。

事故を生まない環境を創造する

ー どのようなお仕事をされていますか?

石狩ウォーターパトロールは、石狩の海の安全を守るライフセービングを行っています。人命救助・水辺の事故防止・安全管理・安全啓蒙活動がメインとなります。溺れた人がいたら助けることはもちろんですが、大切なのは「事故を生まない環境を創造する活動」であること。事故を未然に防ぐためにはどうしたらいいか、子どもたちに海の楽しさやリスクを伝えることも大切な活動です。また、ライフセーバーを育成し海を守る人を増やすことも重要です。日本ライフセービング協会公認の講習会を開催し、サーフレスキューや心肺蘇生法・AEDなどの基礎から応用までの講習を行い、合格者には日本ライフセービング協会公認の資格証が発行されます。現在は遊泳期間中常に勤務している常勤のメンバー、土日や各自の休日をメインに活動している非常勤の学生、社会人を含めて40名ほどです。この活動に興味を持ってくれた大学生、恵庭のハイテクノロジー専門学校で救命救急士の勉強をしている学生たちが多数参加してくれています。夏のパトロールで自分たちが目指している消防士や海上保安庁への実績を積みたいという気持ちと、メンバーには現役の消防士も参加しているので、仲間内での情報交換やコミュニケーションから楽しさをみつけて参加してくれています。日本の海水浴場は夏しかオープンしておらず、ライフセーバーだけだと仕事として成り立たないので、僕自身夏以外は石狩の雄冬という場所を拠点にシーカヤックやアウトドアツアーを行うRED&BLUE という会社を起こしはじめました。

大好きな海で仕事をするということ

ー この職業についたきっかけは何ですか?

子どものころは家族で海水浴に行く機会が少なく、海との接点はあまり思い当たらないのですが、今振り返るとテレビ映像の海を見て「きれいだな。海に自由に行きたいな。」と漠然と思っていました。自分で行動できるようになってから、よく海に遊びに行きましたね。サーフィンを18歳からやりはじめてどんどんのめり込み、同時に海も大好きになっていきました。高校生までずっとバスケットをやっていて体力があり、その体力を活かせないかと思った時に巡り会ったのが、ライフセーバーでした。約14年前、小樽ドリームビーチのライフセーバー団体が立ち上がった時、当時の代表と出会った事がきっかけでセーバーをやることを決めました。その時から海への想いが、自分だけがサーフィンをして楽しむだけでは無いこと、人の命を助けたり、事故防止に努めることにやりがいを感じ始めたんだと思います。石狩では、ライフセーバーが居なく漁師さんや水難救済会が海を守っていたので石狩のライフセーバーとして活動しはじめました。

ー もっとも大きな節目や転機を感じた時期はいつごろですか?

ライフセーバーを始めたのが18歳の頃。夏は海、冬は雪山、春秋は土木関係で働くといった季節の仕事を続けていたのですが、24歳の頃に1度サラリーマンを経験しました。約3年間仕事をしたのですが色々重なって体を壊してしまい、タイミングが悪かったら命が危険だったと言われ、生まれてはじめて1ヶ月の入院生活を過ごしました。今まで本を手にすることは無かったのですが、自分の体を動かすことができない状況で、友人たちが差し入れてくれた本を読みふけ、自分の人生を振り返ったのです。その時「やっぱり海が好きなんだ」と強く思い、そのまま海一つで生きていけるように勉強しようと決めました。当時所属していた、小樽と石狩を拠点とした北海道ライフセービングクラブがちょうど解散するというタイミングと重なり、27歳の時に石狩専門のライフセービングクラブを立ち上げて、今に至ります。今年で5年目となりましたが、ベースのメンバーは発足時と変わらず活動しています。この石狩浜は僕が1番最初にライフセービングをした場所でもあり、北海道で1番お客さんがくる海水浴場です。漁師さん、観光協会、地域の方との繋がりがあって成り立っているので、何かお返しがしたいという気持ちもあり、ここを拠点にしています。人がとてもいいので、居心地がいいんですよね。

笑顔で海にきた人を、笑顔で帰す

ー ライフセーバーのお仕事ならではの達成感やこだわりポイントはなんですか?

笑顔で海に来たお客さんが、笑顔で帰っていく時に達成感を感じます。毎日海にいる僕らは真っ黒、そして救助をするために体も鍛えているので、お客さんは話しかけづらいみたいで会話の接点はなかなか無いのですが、いい笑顔を見せてもらえることが嬉しいです。また、海を守ることの理想を追求しています。ライフセービングという活動事態が水辺における人命救助・事故防止をボランティアで行う社会活動のことをいいます。なのでこの活動で僕たちはお金を稼ごう!とは思っていないのです。利益が出ないからこそ、がむしゃらに動けるんですよね。やらなくても誰も怒る人はいませんが、だからといって手を抜く事はしたくありません。無事故になる為には何をしなければならないのかということを追求して理想に近づけることはこの仕事のやりがいだと思います。

ー 地域との接点はどんなことがありますか?

石狩市が開設している、石狩浜のあそビーチ、厚田区の海浜海水浴場、浜益区の川下海水浴場の3つのビーチの安全管理業務を委託されています。3つのビーチはそれぞれ特色が異なり、楽しみ方も三様に違うので水辺のリスクも様々なパターンがあります。そのビーチ、その地域に合ったパトロール・トレーニングを行っています。今年は6月30日の海開き後8月19日まで、朝8時から午後6時が遊泳時間となります。7時半から準備をはじめ浜のパトロールをし、遊泳時間が終わるとその後は19時半頃までトレーニング中心に行っています。この期間は海から歩いて5分のところに宿舎を借りています。宿舎が浜の近くにあることで、より地域の方との接点が増えました。この辺に住んでいる方はお年寄りが多いので、僕たちを怖がることもなく話しかけてくれます。また、男性だけの古典フラダンス カヒコをしているのですが、地域の方も喜んで僕たちの踊りを見てくれます。神奈川のライフセーバーの先輩が、男性だけでフラダンスを踊った動画を見せてくれ、本場ハワイでは男性のフラが人気だと知りました。歴史もあることを知り、踊りたいなと思って始めました。本当は全員でやりたいんですけど中には照れ屋なメンバーもいるので、メンバー内の7、8人で踊っています。フラは石狩鮭祭り、石狩浜の海開き、介護施設、札幌のイベントなどで踊った経験があります。ライフセーバーをもっと知ってもらうきっかけにもなりますし、トレーニングの一環としても活動しています。スピード感と力強さに溢れる踊りを観て、海に来られた方たちが笑顔で元気になってくれたらいいなと思います。

海を守りたいという気持ち

ー どのような人がこの職業に向いていると思いますか?

もともと僕自身泳げたわけではなく、ライフセーバーになってから泳ぐことを習いました。高校生の時は海水浴場で風に攫われて足がつかない場所まで流され、怖い目に合ったこともあります。そういう海の怖さを知りながらも海に親しみを持っている方がセーバーに向いていると思います。また、ここに集まっているメンバーはお金が目的ではなく、海が好き、人が好き、石狩が好き。そして、石狩浜を守りたいという気持ちで集まっています。そういう同じ気持ちを共有できるメンバーであるということが重要ですよね。働きながら活動しているメンバーも多く、職業は消防士、保育士、看護師、学生とばらばらです。みんな表には出しませんが責任感が強く、困った人がいるといてもたっても居られずに絶対助ける!というような強い気持ちを持った人が集まっていますね。

はたらきっぷ=思い出

ー 今の仕事に興味を持ったきっかけ、仕事に対する価値観が変わったきっかけなどを駅に例えて、きっぷに書き込んでみてください。

19歳の時、室蘭のイタンキ浜に友人たちとサーフィンに行った時、初めて波に乗って、とても水が綺麗で気持ちがよかった。その感覚を忘れたくない、波にずっと乗り続けたい。とその時に思いました。入院した時もその記憶を思い出し、自分の原点に気づきました。この波に乗って自分が感じた感覚はもちろんその時に事故がなく今も無事に生きているからこそそう思えることです。だからこそ自分が波に乗って感じた感覚を多くの人にも感じてもらいたいから海を守りたいという想いがいっそう強くなりました。

未来の海を今から子どもたちと一緒につくる

ー 今後の将来像として、坂口さんが目指している姿はどのようなものですか?

子どもたちには毎週土日にライフセーバーによる海を知ってもらうための「海育」を行っています。海のリスク、楽しさを伝える、遊びながら学べるプログラムです。子ども用のサーフボードをつかって波に乗ったり、一緒にビーチフラッグスなど、セーバー特有の砂浜を走るトレーニングします。海ではどういったことが危険なのか、風が強いから流されるなどのリスクを知ってもらうために、知識を伝え体感してもらいます。子どもたちがどこか水辺で過ごしているときに、「そこ、足つかないから危ないよ」など周りに一言伝えるようになったとき、彼らは立派なライフセーバーの1人として周りに注意喚起をしていることとなり、水辺の事故はさらに減少していくと考えています。8年前からこの海育を実施しているのでが、毎年成長している子どもたちがいつかぼくたちの海に帰ってきて、一緒にライフセーバーとしてパトロールできたらとても嬉しいです。

石狩ウォーターパトロール
代表   坂口智則
住所   石狩市浜益区雄冬1-12
TEL   0164-55-3022
FAX   0164-55-3022
URL   http://i.w.p.hajimeyoo.com